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国会陳情書
衆参議員の方々約40名よりFAXにてアンケート回答が得られました。それらお答え頂いた回答すべてを掲載致しました。

「森のはなし」―樹木や森のはたらき―
東京農業大学 濱野周泰

現在、地球温暖化が大きな社会問題となっています。まさに地球の存亡に関わる事態が発生することを危惧させる情報もあります。

日本でも過去には、人の生命をおびやかす環境問題がありました。最近の代表的なこととして昭和40年代には、公害問題が大きな社会問題として浮上しました。しかし、この時代は経済的に大きく発展したときでもありました。いままでの旺盛な人の活動の裏側には、いつも環境問題がありました。

環境問題、特に地上の大気圏、土壌圏に問題が発生するたびに、それを解決する矛先として植物の重要性がとり上げられます。とりわけ環境形成効果が大きい樹木やそれらが集団となっている森に対しては、環境の再生や環境との共生、特に生物と環境の視点からは自然再生などの面からも大きな期待があります。植物の働きは地球を大気圏、土壌圏、水圏の3圏に分けたときの全てに関与し、地球全体の環境を形成している主役なのです。


地球が誕生したのは46億年前といわれています。原始の地球は、マグマオ−シャンと呼ばれる生物のいない灼熱の世界でした。その後、徐々に地球は冷えて30億年前に光合成生物が水中で活動を始めました。もっとも盛んに酸素を放出したのは20億年前の地層から発見されたストロマトライトといわれています。

ストロマトライトは光合成生物のシアノバクテリヤの群生したものです。放出された酸素は長い時間をかけてオゾン層を形成しました。皮肉なことに紫外線は、酸素分子(O2)を分解し酸素原子(O)とすることでオゾン(O3)の生成に関与しています。オゾン層によって宇宙からの有害な紫外線や電磁線などは遮断・緩和されるようになり、やがて6億年前に生物は水中から陸上へ進出することができました。

水の中で自らの生活に必要な有機物を無機物から作り出す事ができる独立栄養生物の出現によって、生物が水中から地上に生活の場を広げることができたのです。その代表的な生物は、光を利用する緑色生物でした。すなわち植物です。地上に進出した植物は、さらに活発に生活することで多くの生物が生活できる大気環境と土壌環境を形成していきました。

オゾン層の形成に見られるように自然界における環境の形成・変化には長い時間がかかります。1億年前の恐竜が生活していた白亜紀は、現在よりも平均温度が6〜14℃高く、海面は300m上昇していたといわれています。現在の温暖化との大きな違いは、温暖化の早さです。近代の温暖化にみられる環境の変化は、地球の歴史を1年にすると1秒にも満たない時間で起こっています。地球が過去に経験した速度の10倍以上の速度といわれています。

陸上に進出した植物は、生活の基本となる光を受けるための競争で優位になるためにより高く大きくなりました。一方、優位性を確保できなかった植物は、弱い光でも生活ができるように自らの体の仕組みを変化させてきました。植物には光とともに重要な水、温度などそれぞれの環境で生活するための体と仕組みを備えた、様々な大きさと形そして性質の植物が現れてきました。これらの形質を獲得するには長い時間が費やされています。
一見、動きがないように見える森は、人間の時間感覚では動きが捉えられないだけであり、長い時間のなかでそれぞれの樹木が競争し変化しているのです。

※画像はhttp://homepage3.nifty.com/satimage/ より

森は、地球上の生物の生活を左右する最も重要な環境要因として、その情報は全ての人々に伝わっています。代表的なものに二酸化炭素の吸収と酸素の供給、そして多様な生物が生活する場があります。日常生活の中で酸素の存在やそれらが森から供給されていること、そこで生活している生物を意識することはほとんどありません。「空気のような存在」とは、存在感のないことを表している言葉のようですが、日本人にとって緑すなわち森の存在は、まさしく空気と同じになっています。

また「野となれ山となれ」という言葉がありますが、これは日本の気候風土を的確に表現しています。日本のように夏に降水量が多い地域では、裸地を放置しておいてもやがて草が生えて木が伸びて森になります。人が関与することなく裸地は自然の仕組みで森になります。

しかし大陸西岸の冬雨気候の地域や大陸の内陸では、人が植物の生活に関与しなければその生活は継続できません。欧米の主な都市では、土を作り水を与えて植物を育てています。植物を育てることとその恩恵を常に認識しています。意識の中に植物が存在し、空気のような存在ではないのです。特に大型で永年生の樹木や、その集団としての森は環境へのはたらきかけが大きいことから、その存在感は一層大きくなります。日本の気候風土が日本人の植物に対する意識を希薄にしているように感じます。

※画像はクリックすると拡大いたします。

環境緩和(気象、公害、防災)

樹木や森による環境緩和のはたらきは、それらの形態によってもたらされます。樹木や森が存在することによる物理的なはたらきです。夏の強い日射を遮り緑陰を提供することは、日射による地面や建物などの温度上昇を抑止します。この他にも防風、防雪、防霧などの気象緩和、塵埃の捕捉、騒音の軽減など公害の緩和があります。

樹木が存在することによる物理的なはたらきは、土砂の流出防止、斜面の保護などの防災をはじめ多くのものがあります。これらは樹木が地表を覆うことによるはたらきです。

環境浄化(大気、土壌、水)

樹木の生理活動によって地球の環境は形成され、保持されています。光合成は、呼吸活動によって体内に取り込まれた二酸化炭素をブドウ糖に変えてエネルギ−源としています。同時に炭素を蓄積することで樹体の成長にも利用しています。大気からは二酸化炭素と同時に他の物質も同時に取り込まれます。中には有害物質も有りますが、これらも呼吸活動を通して体内に蓄積させます。樹木にかぎらず植物の呼吸活動は地球の空気フィルタ−の役目を果たしています。
光合成に必要な水も根から吸い上げられ、主に葉から蒸散することで大気へ拡散していきます。やがて雨になり地上へ戻り、また樹木の根が吸い上げます。水は大気から地上、そして樹木から大気へという大きくゆっくりと樹木の体内を通り抜け同じ道をたどっています。樹木の体内を水が通り抜けることで水フィルタ−として水質の浄化にもはたらきかけていると考えられえています。

水の貯留と湧出

森は樹木が生活していることで、地表には落ち葉や枯れ枝がたくさんあります。ここは小さな動物たちの生活の場になっています。また、この地表にある柔らかな部分は雨や雨滴が直接土壌に当たることを防いでいます。そして雨などの水分がゆっくり土壌にしみ込むためのスポンジの役目をしています。晴れた日には、土壌から蒸散する水分を抑えてくれています。雨が長い間降らなくても森の中から水が湧き続けることができるのは、降ってきた雨の強さを樹木の枝葉が弱めて、地表にある落ち葉などの堆積物が軟らかく受け止め、ゆっくりと土壌にしみ込ませて貯えることで、水の湧き出しを安定させていることによります。

人は、主に自らの行動に不自然さを感じることや健康が阻害されることで、はじめて環境を認識します。特に健康が阻害されて、その存在の重要性に気がつくことになります。環境を形成するという視点からは、森の存在も同じです。森の消失や崩壊は、地域の健康状態に障害を及ぼす悪性因子が発生したことと同じです。先に述べた森や樹木のはたらきは、植物が基本的な生活を営むことによる結果です。人は、この営みに寄生してきたとも考えることができます。人はもちろん他の生物が依存している、この営みの場を人が奪っていることが現在の状況です。

森は、自活することの出来る光合成生物の集団ですから、人の関与がなくても存続することができます。しかし人を含めて従属栄養生物は、植物を根源とした有機物の供給を受けて生活をしなければなりません。森を構成する植物は、人が生活する日常の食料とするにはやや無理があるかもしれませんが、季節の山菜やきのこなどは食べています。人は、直接木の実を主食として食べることはほとんどありませんが、物質の循環の中に組み込まれていることを再確認する必要があります。森や樹木の環境形成作用によって日常の生活が支えられていることを認識する必要があります。

私たちが環境の世紀に生活するには、この植物が自然に育つという恵まれた環境をよく理解し、最大限に活用する知恵を身につける必要があります。それには森や樹木と直接触れ合い体験することが最も効果があります。特に「森づくり」は、樹木を対象とすることから、過去の取り扱いが形として現れ、また人の大きさを超えて成長する樹木は、多くの感動を与えてくれます。この過程を観察することは、人の存在を改めて考える機会になります。また森は、多くの生物が生活する場として、生物同士が共存と競争をすることによって成り立っていることをみせてくます。森では生物の宿命が生み出すドラマが繰り広げられています。

森からは、生物同士のつきあい方の基本や人が森と関わる上での文化の存在が伝わります。それには科学的な目と人の倫理を備えた純粋な感性が養われていることが求められます。森の必要性は他人から教わるものではなく、自ら感じ取るものです。
森の存在を社会資本として位置づけるには、森が存在する地域の人の熱意が最も重要ですが、その森が社会へ貢献していることを広めるには、より広い人々の支援が必要です。現代に生活している私たちが、負の遺産を次の世代へ残さないようにしなければならない責任があります。多くの人が特に子供たちが森づくりへ参加することは、環境の世紀を担う人材育成に大きく貢献するものと考えます。

※画像は市川自然博物館より

参考リンク:国立環境研究所
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