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里山の再生に向けて 「里山ボランティア育成講座」
「森のはなし」 ―里山の再生に向けて―
東京農業大学 濱野周泰

人は、生物分類学の見地からは霊長類に位置づけられています。霊長とは@霊妙不思議な力をもつ、優れたもの。A万物のかしらなどの意味があります。霊長類の主な特徴として、多くの種は森林に棲息していて樹上にすみ、昼間に行動します。しかし人は、今から1000万年前から500万年前に原始霊長類から分かれ、樹上から地上に生活の場を移して独自の進化を遂げてきました。

人の生活と森や林私たちの生い立ちを考えてみると、緑を見ることやその空間に身を置くことによって精神的な安定や安らぎ、あるいは癒しを感じることなどを含めて、植物が無くては生活が成り立たないことが理解できます。
 森は人を含めて生物の生活の場でありエネルギ−と物質の循環の原点です。人にとっても森は生活の基礎となる食料を供給してくれる直接的な存在でした。現在の森でも、人を除く生物の生活の場としてエネルギ−と物質の循環が行われています。人の生活の場は、樹の上から降りただけではなく森の外へ移っています。森の外へ出たにもかかわらず日常生活、社会活動がともに活発化するにしたがって森への依存度は高まりをみせています。

以前、森は持続可能な資源を提供してくれる場所としてなくてはならないものでした。人は森の中や周辺に生活の拠点をつくり、森と共に生活を営んできました。現代でも、ジャングルや樹林の中、あるいは里山と呼ばれる平地林に隣接して生活を営んでいる人々がいることからも、その様子は容易に推察することができます。しかし本来、人の生活に密接な存在であったはずの森が、精神的なものや生物の多様性を担保する空間としての価値付けなど間接的な意味合いを濃くすることで実体としての存在感がうすらいできているように感じます。

樹木が集団となっている空間を、「森」、「林」と呼んでいます。「森」と「林」は大変よく似た言葉で、同じ意味のように考えられていることが多くあります。両方とも樹木がたくさん茂っている状態を指している言葉としては共通していますが、「森」は、樹木を中心にしたそれらが生える土地、他の生物をも含めて解釈されることが一般的です。さらに樹木だけではなく、そこに生存する生物集団を全て含めて利用という観点から森とする考え方もあります。生物の生息空間としてとらえることもできる森の概念には、立法、行政、社会や経済のシステムなど使う人によってかなりの幅があります。「森」と同じような意味合いで「樹林」という言葉も使われます。一方、「林」は「樹木の群がり生えた所(広辞苑)」とされています。つまり樹木が集団化した様子を表現していることになります。そこには生物が生活している場としての要素はありません。
林については類似した言葉として「雑木林」、「薪炭林」、「二次林」などがあります。それぞれに意味合いをもった林です。「雑木林」については、これを「ぞうきりん」と「ぞうきばやし」のどちらで読むかということがあります。前者は機構や働きに重点をおいており、後者は樹木の集団の様子を外観的に見たときの表現として考えられています。

林には、多くのはたらきと意味合いがあり人の生活に関与しています。このような林を表現する言葉として「里山」があります。里山は、一般的には集落の近くにある山林を総称していますが、色々な利用が行われている林ということを考えると、類似したものに「農用林」があります。里山や農用林には明確な区分はなく、時代や地域により異なり、集落の規模や居住者によって林は様々な様相を表します。地域独自の景観を現代に残している代表的な林として「武蔵野の雑木林」があります。人の関わりが表に出ていない自然の林相をもった林です。
 里山は、土壌や大気などの環境と密接な関係をもち、絶えず炭素、チッ素、リン、カリウムなどの物質の循環が行われています。この物質の循環によって里山を構成している樹木の生活が保持されているのです。施肥や耕転などにより植物の生育環境を維持している田畑とは大きく異なっています。樹木と土との間を物質がくりかえし循環している現象を「自己施肥系」とよんでいます。樹木の生活が物質循環の源となる有機物を生成しているのです。

独立栄養生物としての植物、特に木本植物である樹木が集団化している里山では、自給自足の生活が繰り広げられています。まさに循環型社会の見本です。人は里山の生産物としての恵を受けることによって生活が支えられていたはずです。地下資源を利用するようになってから、人は循環型社会から離脱したともいえます。現代社会で人が利用するエネルギ−と物質の循環は、里山や奥山が生産する物質量では不足しているといわれ、循環系に歪みが出ています。各方面で循環型社会が提唱されているが、掛け声倒れになって実効が上がらないのはエネルギ−と物質の総量削減をしないからです。

里山は、自然の節理の中で分解・還元によって余剰を処理し、生産活動によって不足を補充しています。かつて人は里山の生活を支えることで、その余剰の分け前を得て循環型社会の一員となっていたのです。
里山は、直接的な生産物を供給するだけではなく、環境の形成にも大きく貢献しています。夏に1本の樹木が作り出す緑陰は、その場の環境因子としてはたらいている良い例です。生き物と環境の関係から見ると反作用あるいは環境形成作用といわれています。樹木が集団化した里山は、より大きな環境形成効果を発揮します。しかし里山が作り出す環境は、人の生活に都合の良いものばかりではありません。特に自然の遷移に任せている林では、目的外の林相になることが多々あります。人の立場からみた環境にはプラスとマイナスの両面があり、里山にもこの両面があることを認識していなければなりません。特に、里山に直接的に関与していない人は、批判的な立場をとります。人は生き物ではないかのような発言をする人もいます。

人の生活に有益な里山を本来の姿にするには、里山を構成する1本1本の樹木の性質をよく把握する必要があります。人が関与することで生態系が成立している里山を取扱う上で重要なことは、樹木という生き物を対象にしていることを常に意識することです。生物と環境の関係、すなわち生態系を構成している生物群集と無機的環境との間にある作用、反作用、あるいは生物同士の相互作用について認識する必要があります。

 

@作用・・・・・・環境が生物にはたらきかける
A反作用・・・・生物が環境にはたらきかける
B相互作用・・生物同士がお互いにはたらきかける

樹木は、環境のはたらきかけに適応するとともに、環境にはたらきかけることで環境の急激な変化を防ぎ、多くの樹種がより大きく成育できる環境へと変化させています。

樹木の生育基盤である土壌については、土壌の生成状態と樹種との関係が重要です。このことは後述する遷移とも深く関係しています。地球上に陸が形成された当時の岩石が風化によって砕け、徐々に細かくなり土壌の基材(母材料)が形成されました。地球上では、これに植物や動物などの生命体があることによって生物が生息することのできる土壌が出来上がっているのです。生命体を持たない惑星の地表は、岩石と砂によって形成されています。土壌を基盤として高等植物は根を張り、落葉や枯死した植物の遺体を有機物として地上に供給しています。これらをミミズなどの土壌動物、カビやバクテリヤなどの微生物が分解して無機物にしたり、もとの有機物とは異なった有機物(腐植)に変えたりします。岩石はさらに細かくなり粘土になり、植物や動物の作用、水や温度の影響などによって物理的、化学的変化を受けて、地表にはもとの形質とは全く違ったものが出来上がります。土壌は、@母材料、A気候、B生物の作用、C地形。D時間の5つの因子による総合作用によって出来上がります。

植物の生活に必要な水は、雨水として供給されます。樹木の枝葉は、雨水を遮断して地上への到達を複雑にしています。枝葉に留まった雨水は地上に到達することなく大気中に蒸発していきます。枝を伝わって幹を流れ下り地上に到達する雨水は、樹幹流とよばれています。樹冠の隙間を通過したり、枝葉からしたたり落ちて地表に到達する雨水を林内雨といいます。

林の有無による雨水の侵食を比較すると、林地は侵食深/年は0.2mm、出土砂量/年1.8t/haであるのに対して裸地では同6.7mm、87.1t/haです。これには林が雨水の落下を和らげていることと森林土壌としての働きが大きいと考えられています。
 土壌への水の供給源は樹冠流と林内雨です。降水量にほとんど差がないのに土壌が乾いているところと湿っているところがあるのは、地形の影響が大きく関与しています。傾斜が25〜30度の樹林地では、雨水は地表を流下するようなります。土壌中に浸透した水も斜面に沿って下方へ流れ去ってしまい、平地に比べて乾燥した土壌となります。

里山は、同じような気候帯では似たような林相を示します。一般に里山の相観は優占種によって決まります。優占種は、群落内で被度が最も大きく、個体数も多く群落を特徴づけています。また生育環境に対して適応範囲が広い性質をもっている種類が多くあります。
しかし里山を構成している他の種は、優占種よりも生育環境に対する適応範囲が狭く、分布の範囲は細かくなります。外観からは同じように見える里山でも、内部は全く違った植物が生育しているのはこのためです。生育場所のわずかな環境の違いに適応した植物が、適応範囲の広い樹木とともに里山を構成しているのです。

放置された里山は、時間の経過とともに安定した林に向かって変化しています。ある土地に成立している植物群落の種類組成が、時間の経過とともに交代していくことを遷移あるいは植生連続(succession)とよんでいます。遷移には、これまで植物群落が存在していなかった溶岩地、砂礫埋没地などから始まる一次遷移と、森林の伐採跡地、山火事跡地などのように遷移が始まる前に植物が存在していた土地から起こる二次遷移があります。また乾燥環境から湿性化へ進む湿性遷移、湿潤環境から乾性化にすすむ乾性遷移などがあります。
日本のような湿潤気候下における遷移は、裸地(地衣・コケ群落)→1年草の草原→多年草の草原→陽性樹種の低木林→陽性樹種の高木林→陰性樹種の高木林という具合に進みます

ある地域の最終的な植生の姿が気候帯に適応した植物群落となっているときに気候的極相とよんでいます。気候的極相に至る遷移は、主に光要因によって支配されています。また、ある気候下において本来到達すべき最終的な植物群落が成立せずに、気候的極相に到達する前の段階で遷移が安定した状態を迎えたとき土地的極相とよんでいます。地形や土壌の物理性や科学性、湿度あるいは微気象(小気候)などによって成立した植生です。土地的極相に至る遷移は、主に土壌とくに水要因と表土の厚さが影響していることが多いと考えられています。この背景には地形的要因が関与しています。
遷移の観察にあたっては、植物の種類を同定することとその植物の生態をよく把握しておく必要があります。環境の把握は計測機器が充実してきているので容易になっています。
最終的に成立した安定した植物群落を極相(climax)とよんでいます。日本の植物群落の極相は、主に陰性の樹木によって形成されるようになります。上層林冠を構成する樹木の後継樹は林内でも生育できる陰樹です。この樹種による世帯交代が行われるようになります。

里山の維持と再生人によって維持されてきた里山も、放置すると自然の遷移(節理)にしたがって変化します。一般に樹林は安定した森に向かって遷移しますが、極相の植物群落を目的とする場合には樹林を放置することで目的の姿に到達します。
 里山とつき合うには、目的とする林の姿(ヴィジョン)をもって管理しなければなりません。里山を一定の状態に保つには、遷移の抑制と人為により更新する必要があります。土地の生産力を最小限にしていても樹木は、毎年大きくなります。関東地方では約20年に一度、除伐することで同じような里山の景観を維持してきました。除伐直後は、草本を主体に灌木を混じえた景観になります。その後、徐々に樹木が生長することで除伐前の林の景観になります。本来の里山は、皆伐によって維持されてきましたので、景観的に大きな変化がありました。現代では批判の対象になるかも知れません。しかし生産という行動を前提に里山を維持するためには、仕方のないことです。

近年、里山の対する価値観が生産から環境面へ移行しつつある中で、樹木の除伐について択伐の考え方が出てきています。これを実行するには、同齢林の里山を異齢林へ変更する必要があります。同じ林齢であっても大きさによって除伐の順番を決める方法もあります。しかし択伐によって里山を再生させ永続的に維持していくには多くの労力を必要とします。

人が森や林の生活に関与することなく極相林の生活環(生態系)を完結させるには、森や林の自活を支える生物が棲息できる空間が必要です。一説には50ha が最小面積ともいわれています。健全な森は美しいと言われるように森の景観を美しく保つには、樹木が健全に生育している必要があります。里山では林内の衰弱木、他の樹木の健全生育を阻害する支障木、形姿不良木などを除伐することで景観的にも整備を行ってきました。近年では、これらの除伐対象木は生物多様性の観点から森の中に必要ではないかとの見解も出されています。生産の立場と環境の視点の両面から里山をみることが重要です。里山の管理にあたり目的設定を明確にすることです。

森や林を構成する樹木の管理には、1本1本の樹木を剪定する緻密な管理から樹木密度を調整することで森全体を管理する方法まで多様な取り組み方があります。労力と経費の点から最も効率的に里山を管理するには、個体の必要量を判断して除伐していく方法が考えられます。個体そのものの管理は森の密度管理であるといえます。成長段階に応じた空間を作りだして行くことで目的の森が形成されていきます。多くの樹木が集団化している里山では、個体毎の剪定などは不可能に近いものであり、これによって管理が実現したとしても景観として評価されるとは限りません。
 里山は自己施肥系として自活していると先に述べましたが、土壌の生成を補助することで落葉落枝の堆積した林床を持つ里山の樹木は本来の姿で成長を継続していきます。

里山の再生事例として、滋賀県八日市場市の某工場の森を紹介します。この林の再生は、ある意味では林の造成として位置づけられます。対象地は、マツ枯れの激甚被害地であり、林冠を形成していたアカマツが消滅して、林内に生育していた樹木が日射を直接受け生育が不良になるなど多くの樹木の健全性が失われ、林の高さも著しく低くなった状況でした。また敷地の造成にともなって緑化された場所でも、樹木の生育が不良であり、その効果が十分に発揮されていないところがあるなど樹林化が進まず、里山の姿にはほど遠いものでした。
里山の再生にあたり、現況把握として群落調査をおこないました。その結果、現存植生は、残存しているアカマツ、既存のコナラ、林内に生育していたソヨゴなどを優占種とする9群系18群落に整理できました。この群系・群落は、主に優占種によって区分したものでしたが、立地条件をよく反映していました。これは対象地の潜在能力を把握するよい資料となりました。
樹木の生育を支える潜在能力の高い所から個体密度の調整、植栽により修復を始めました。目的は、早く樹木を大きくして樹木の生育環境を改善することでした。

里山を維持する事例として山梨県北巨摩郡白州町の某工場の林を紹介します。この里山はアカマツ・コナラを主体とする二次林です。定期的な施業(落葉落枝の掻出、萌芽更新など)を停止してから約50年が経過した林です。この森を永続的に維持するための管理指針を策定するために現存植生の把握から調査を始めました。

現存植生は5群系12群落に整理することがでました。この現存植生は、主に優占種によって区分したものですが、均一に見える林の景観でも微妙に異なる立地条件をよく反映していました。さらに気象、地形及び土壌の調査もしました。当該地の植生は地形と土壌によって変化がみられ、気象の影響は少ないものと考えられました。現状の植生を維持するための具体的な方針は次の3点です。

@森を構成する樹木の成長をさらに促すための択伐を行う。 →→被圧木、先駆植物、過密木、病虫害被害木などの除伐
A森の骨格づくりのための補植
B地表面の管理

→→有機物の補給による地力の増強、一方アカマツ林では表土の掻き出し林の形態に応じた樹林の維持管理は、生態系を構成している消費者、還元者の増加による多様な生物の生息空間づくりにもつながると考えられました。

里山の再生や維持は、人が林をどのように見て、将来の姿(ヴィジョン)をどのように設定するかが最大の課題です。今までの里山は、生産という明確な目標が設定されていました。しかし、これからの里山は、環境形成を期待されながら存続しなければなりません。すなわち人の生活空間の一部に組み込まれた社会資本としての姿が求められます。

日本最古の環境形成の文献とも言える「作庭記」の骨子は、「自然の節理」を大切にすることです。生き物としての生死に関わる自然の節理もあります。一方で主体となった人の生活様式を自然の節理に照らし合わせてみることも重要です。里山に接する基本は、1株の草、1本の樹木の認識からはじまります。それらの取扱いや関連性の知識が増殖し、やがて景観として姿を表したときには人の行為と自然が融合したランドスケ−プとして目にすることができます。人が生き物を取扱う基本は、生き物とそれを取巻く環境としての自然を熟知することです。その取扱い方法や姿は文化として子孫へ受継がれていくことになるものと考えます。

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