いつもは地上部の緑の茂みばかりに目を奪われてしまうのだが、ふとそれを支える根の存在に気付く時、そのすさまじさに唖然としてしまう。
もう半世紀も前の取材の際、ついでに寄った魚津の埋没林資料館を見た時の衝撃が、今も忘れられない。まるで突然、太古の恐竜に出くわしたような思いに立ちすくんでしまった。
日本海に向かって続く海辺の寒村の果てに、それはあった。古びた小学校のプールのような施設で、そこに巨大なスギの古株が幾つか沈んでいただけだったのに。

奇跡の一本松
解説によれば、漁港の拡張整備の際に掘った海の中から、大木の根っこが幾つも出てきたという。
日本列島はほんの少しずつ東にずれて行く。かつて海岸寄りの高地
にスギ林があったのだ。海辺には根の部分が半ば海水に浸りながら、オオイヌタデが群落をつくっていた。塩水の中で?信じられない光景だったので舐めてみたら、太平洋の海同様に海水は塩辛かった。
週に何回かは各社の新聞を見に図書館へ行く。そこで偶然にも都心の場所で陸前高田市のあの奇跡の一本松の根を公開展示しているという記事を見つけたこれは絶対に行かねばなるまい。
3.11の大津波の後の植生調査については、2012年3月10日に市川みどり会主催で東京農大の濱野周泰先生のお話を動植物園の研修室で聞いている。「ヤブツバキが茂る場所よりも下に住んではいけない」など、興味深いお話をたくさんお聞きする機会に恵まれた。
アイマツの解説もあった。あらためて刈住曻「樹木根系図説」(誠文堂新光社)を読み返す。1100ページものずっしりと重い著書だ。
そのほんの一部だけを紹介するのは誠に申し訳ないのだが、クロマツの記載は下記の通り。
《マツ型》水平根と根株の下に発達する長大な垂下根が明瞭。細根は表層に集中分布。深根性。広がりは大。分岐は疎。細根は肥厚して疎性。根毛は密生。明瞭な杭根型。マツ・モミ亜型に区分される。
巨大な根株の展示会場では、2013年にNHKが制作放映したドキュメンタリー「奇跡の一本松を追って」が繰り返し流されていた。地元の人たちの熱い思いが伝わってくる。
7万本あったといわれる名勝の高田松原は、根こそぎ波にさらわれた中で、葉をつけたまま生き残った唯一のマツで、樹齢は173年だったという。
長期間海水に浸っており、1年後には立ち枯れ状態になっているのが確認された。それを保存維持するためには1億5千万の費用が必要になるという。何もしなければ焼却されるかチップにされてしまう。地域の復興もままならぬ中で、今後の方針について地元の人たちの意見も色々あったようだ。

奇跡の一本松
(FNN財団)
地域の人たちは、枯れかかったマツに花を持ってお参りに来る。虫食い穴にはアクリル樹脂を詰め込み、はげ落ちた木肌の凹凸の何百枚もをパズルのように組み合わせ、少しでも元の形に近くを心がける。芯を入れるためのくりぬき作業も、幹のわずかな曲がりに苦労した。
空調設備が整った室内で管理される文化財の場合と違って、風雨に晒される条件下での永久保存のための努力が続けられる。
保存に向けられた方針が確認された後、2012年12月に抜根作業を実施。地表からの根の深さはおよそ1.6mだった。
幹を中心に根は直径13mに広がっていた。抜根の際には、約2tにもなる中心部分とそれ以外の周辺部に分けて掘り起こされ、現地の倉庫で保管されてきた。
今回の展示準備のためにあらためて倉庫内で仮組み立てをしたのだそうだ。
陸前高田市から都心の紀尾井町までの移動も大変だったことだろう。ショールームのガラスを何枚も外してやっと室内に収めたという。実はスケッチブックを持参して久しぶりに木炭デッサンしようという気になっていたのだが、とてもそれどころではなかった。
根株の切り口は高くて見えない。ロープの内側へ潜りこむことも不可能。幹の真下部分は複雑にとぐろを巻いたように絡み合っていて、杭根は見当たらない。ともあれこの根が173年の風雪に耐えて生き残ったのだ。
現地の砂の下はどんな地質だったのか、またもや途方にくれてしまっている――。
『東京農業大学客員教授 濱野周泰 寄稿』

奇跡の一本松
東日本大震災の津波被害として陸前高田松原にいても調査をしました。
その結果、マツの被害は2つのタイプがありました。1つは根こそぎ津波によって引き抜かれてしまうマツ、もう一方は幹が折れて流されるものでした。前者は主にアカマツに見られる被害でした。

奇跡の一本松
後者は主にクロマツに見られましたが、松原のマツには幹折れしたマツが多かったのですが、ある一定以上の太さの太さがあるマツの外見はアカマツに似ていました。
それらのマツは、地番沈下量(約-1m)を考慮しても松原の砂浜の海水に浸るところまで根が伸長していました。
一般論では、マツは水に浸ると根腐れすると言われています。長い根では約4mにも伸びていました。
「奇跡の一本松」もマスコミではアカマツと称していましたが、同じくらいの太さの被害木と同じような形態でした。
調査時に生存していた奇跡の一本松から葉のサンプルを採取して調査したところ、アカマツとクロマツの中間的な「アイマツ」ということになりました。
この結果と同じに結果になりました「森林総合研究所東北支所」の判定記事を次に示します。

奇跡の一本松
地盤沈下で海の中に自立しているアイマツです。

奇跡の一本松
(ブログ投稿日時 2022-05-17)
